東北山行 その57
雪が降っていないので、熊がそこにいる最大の痕跡、足跡がみつかりません。
グループの長”シカリ”の判断で猟場(マタギ言葉で”クラ”という)を決め、山に入ります。
年長の方は80を過ぎた人も、何事もなく当たり前の様に、急峻な斜面を登って行きます。
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雪が降っていないので、熊がそこにいる最大の痕跡、足跡がみつかりません。
グループの長”シカリ”の判断で猟場(マタギ言葉で”クラ”という)を決め、山に入ります。
年長の方は80を過ぎた人も、何事もなく当たり前の様に、急峻な斜面を登って行きます。
”ノックアウトダイナマイト”内山高志選手のオフィシャルサイトとオフィシャルブログで、写真をご使用頂いてます。
11月15日、狩猟の解禁日の朝、村はずれのマタギ神社にマタギの方々が集まり、山神様に祈りを捧げます。
不思議な呪文を唱え手を合わすその場は、厳かな儀式でした。
例年であれば東北のこの集落では、11月の始めに初雪が降るそうですが、今年の初雪はまだ。
朝夕の冷え込みが、透き通った空気を一層無色にしていくと、このあたりも深い雪に閉ざされた世界へと変わっていきます。
林 孝亮(はやし こうすけ)というボクサーがいた事を、知っていますか。
林くんは、名古屋の緑ジム所属のボクサーだったので、東京ではあまり馴染みがないかもしれませんが、3度後楽園ホールのリングに上がっています。
ご縁があり、林くんの試合を2度ほど撮影させて頂いた事があります。
初めて会った時の印象は、とても純粋そうでまっすぐな意志を持った好青年。
無敗のまま、2006年度の全日本新人王を獲得し、その後も勝ち続け、ランキングをあげていました。
そして、今年2008年3月に、日本バンタム級1位の丸山大輔(筑豊)を7ラウンドTKOで沈める殊勲をあげ、これからが期待された矢先でした。
網膜剥離。
15戦全勝7KO 22歳
あまりに早すぎる、そして、やりきれない引退。
林くんの後援者の方からお電話を頂き、それを聞かされた時は一瞬言葉を失いました。
正当派のボクサーファイターで、勝利への強い執着を感じさせるファイトが、見ている人の心を掴む選手でした。
トップコンテンダーを倒し、タイトル挑戦に弾みがついたと思った矢先に引退とは、言葉に出来ない・・・。
現在、埼玉県で働いている林くんと、先日会う機会がありました。
手術が大変だった事、気持ちを切り替えて次の人生の目標を手探りで探っている事。
日本ではリングに戻れないという、どうしようもない現実を突きつけられた苦悩は、カラッと明るく話すその口ぶりからは感じとれません。
時間が中和してくれているのでしょう。
「何でもいいから、社長になりたいんです。」
少しふっくらした林くんは言いました。
その明るさで、新しい道でも人の心を掴んで、なんでもいいから社長になれ!!
応援してるよ!
2008年12月9日後楽園ホールで開催された OVER HEAT BOXER'S NIGHT Vol.47 のメインイベント8回戦、日本スーパーライト級(63.5kg)4位 長瀬慎弥(フラッシュ赤羽)くんと会田篤(ワタナベ)くんが対決しました。
2人のファイトスタイルを考えれば、好試合になる事は想像出来たので、楽しみにしていたのですが、予想を裏切らぬ好試合になりました。
初回、長瀬くんの右がカウンターでヒットして会田くんがダウンします。
会田くんは立ち上がり、2ラウンド以降は一進一退のスリリングな打撃戦が繰り広げられ、身体が“ビクッ”と反応してしまうようなタイミングの相打ちが何度も見られました。
そんな中で、元々スーパーフェザー級(58.9kg)を主戦場としていた会田くんが体力の差で若干押されているのかな、と感じさせるようになります。
7ラウンドに長瀬くんの右がカウンターで決まり、会田くんが2度目のダウン。
ダメージが深く見えますが、追撃する長瀬くんを逆にロープに詰め返して反撃し、会田くんがガッツをみせます。
最終8ラウンドも互角の打ち合いは続き、試合は判定に持ち込まれました。
2度のダウンはありましたが、印象的には会田くんが取っていたラウンドも少なくないと感じていたので、勝敗は以外と微妙かなと思いました。
ジャッジの採点は、2-0で長瀬くんの判定勝ち。
スリリングなパンチの交換に、熱くなりました。
試合後、控室に行くと、昨晩WBC女子ライトフライ級暫定王座防衛を果たしたチャンピオン 富樫直美さんがいました。
昨晩、富樫さんと挑戦者の菊地さんは、1ラウンドから激しい打ち合いを見せ、ホールを湧かせました。
目の前に居る富樫さんは、そんな激闘を見せたボクサーのオーラを微塵も感じさせず、一人の穏やかな女性にしか見えません。
昨晩は、カメラを持たずに客席から観戦をしました。
客席からボクシングを見ると、観客の様子やセコンドの様子、普段写真を撮っていると気がつかない、一歩ひいた目線でボクシングを見る事が出来ます。
その距離で会場を見ていると、この人がどれほど周囲の人に慕われているのか、その人柄が良く伝わります。
「昨夜は凄い試合でしたね。 防衛おめでとうございます。」
と思いを伝えると、申し訳なさそうにしながら、控えめに
「ありがとうございました。」
と言い、口にマスク、左目に眼帯をした顔から唯一見える表情、右目の目元に柔らかなはにかみ笑いが浮かびました。
フォトジェニックな、素敵な表情がマスクの下にはあるのだろうな・・・。
不躾なお願いだと十分わかりながら、撮影させて頂いてもいいですか、と聞くと、マスクを外してくれました。
「これもとったほうがいいですよね。」
と言って、眼帯を外そうとしてくれたのですが、それは僕を一瞬迷わせました。
女性である富樫さんの傷ついた顔を撮らせてもらって、俺はどうしようというんだ・・・。
眼帯をしたままの富樫さんにレンズを向けさせてもらいました。
写真を撮るという行為は、時としてひどく暴力的だなと感じる事があります。
勿論、相手が嫌だという時は撮らないようにしていますが、承諾してくれて撮影しても、それは、時に自分の心を鋭くえぐる。
それでも、僕は写真を撮る覚悟を決めた。
そうして写し出した写真が、人の心に何かを伝える力を持った写真になると信じ、僕は写真を撮ります。
長瀬くん、会田くん、富樫さん、「ボクシングな夜」にしてくれて今日はありがとうございます。
Shinjuku
「ボクシングは『ど真ん中』だった。」
そう語ったボクサーがリングを去りました。
12月1日、後楽園ホールのリングには、この試合を最後に引退する川崎タツキ(草加有沢)さんが上がりました。
来年4月でプロボクサーの定年である37歳になる川崎さんは、チャンピオンになれば現役を続行できますが、年頭のチャンピオンカーニバルを考えれば、トップコンテンダーではない川崎さんに、タイムリミットまでタイトルマッチの舞台が用意される事はおそらくなかったと思います。
元暴力団構成員、薬物中毒、背中の入れ墨を皮膚移植で消してプロボクサーになり、3度のタイトルマッチに惨敗。
愚直なまでに前進を続け豪打を振るう、見ている者の心を揺さぶるその無骨な戦いっぷりに魅了されてきました。
そして、その前歴を感じる事が出来ない穏やかな人柄が、接する人を引きつけるんです。
この夜、メインイベントのリングに登場すると、客席から歓声とテープが飛び交いました。
ラストファイトのゴングが鳴ると、川崎さんらしく戦い、引退試合に選ばれたタイ人選手から、2ラウンド・3ラウンドに計4度ダウンを奪いTKO勝利で最後を飾りました。
引退セレモニーのリングには、愛娘を抱き上げた川崎さんと奥さんが上がりテンカウントのゴングを聞きました。
3人の姿を見ていると、
「これでよかったんだ。」
そんな思いが、ふと浮かんできました。
控室で記者の方から、川崎さんにとってボクシングは言葉にするとどんな言葉になるか、という質問に、
「なんかうまく言えないけど、『ど真ん中』って言う言葉が浮かぶんですよね。えへへ・・・。」
愛嬌一杯の笑顔で答えました。
『ど真ん中』
川崎タツキさんというボクサーにぴったりの言葉です。
川崎さん、ありがとうございました。
そして、お疲れさまでした。
マタギの方にワサビ採りに連れていってもらいました。
林道に車を止めて、そこから道なき道を1時間程山中に入っていくと、沢にそった一体にワサビが群生しています。
ワサビ田で監理されて育っているワサビではないので、大きくても親指大ほどの大きさです。
必要な分だけ採り、小指くらいの小さなものは来年の為に残しておきます。
ひっそりと静まり返った山中を歩いていると、時々 枯れ木の上にクマ棚が表れます。
木の幹には、爪の跡。
猟銃を持ったマタギの方と一緒でなかったら怖くて歩けないなと、大自然の中ではちっぽけな動物である自分に気がつきます。
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栃木の天宮農園から立派な百匁柿が届きました。
Hさんありがとう!!
Shinjuku
Shinjuku
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