PHOTOGRAPHER
Hiroaki Yamaguchi

BLOG

2019年5月

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井上尚弥vsエマヌエル・ロドリゲスを撮影するべく向かうグラスゴーへの道中、ロンドン ヒースロー空港でトランジット。初めての空港は勝手がわからないので、乗り換えに間に合うかドキドキする。
英語表記の掲示板を見ながら、グラスゴー行きの飛行機に無事にたどり着き、座席に座りホッと一息つくと、ふと、カーラという少女との邂逅が思い出された。

初めて海外に行ったのは23歳。
当時ジムメイトだったOPBF東洋太平洋ミドル級王者だったケビン・パーマーの家がNYブルックリンにあり、そこにマネージャー(現在会長)と滞在させてもらって、ケビンと一緒に1週間グリーソンズジムに通った。

1週間経ち、ケビンとマネージャーとはJFK空港で別れ、一人でメキシコシティに武者修行に向かう。

今考えてみれば、高校イングリッシュをしっかり学んでおけば十分すぎるほど旅には使えるのだが、不真面目な学生だった私の頭を言葉の不安が占領し、手に汗握りながらの旅。
ロスアンゼルスで乗り換えがあった。
異国での自分のコミュニケーション能力の低さを痛感し、たまらぬ緊張感の中、やっとメキシコシティへの便に乗り継ぎ、席に着くと、白人の少女が隣に座った。
どうやら飛行機が怖かったようで、離陸の際も両手を合わせそよそよと落ち着かない少女。

当時は筆まめだった私、毎日日記をつけていたので、初めての一人旅に突入したドキドキを、興奮しながらノートにしたためていると、隣の少女が

『この文字は何?』

と話しかけてきた。

『ディス イズ ジャパニーズ ランゲージ』

とカチカチのカタカナ読みで返すと、漢字に興味を持ったようで

『私の名前はカーラ。この字で書いてくれないかしら。』

むむむっ、カーラときたか。マリアとかなら簡単なのだが、ーが入ると漢字にしずらいなぁ。キラキラネームみたいな感じでやっちまうか。
と腹をくくり、

『加亜羅』

と、可愛らしい少女に送るには、少々いかつい高架下のスプレー落書きのような当て字をノートの切れ端に書き贈呈した。
思いの外喜んでいる様子。

今なら『花安良』とか、『華安裸』とセクシー臭漂う漢字にして、大人の喜びを込めた字を送れたのだが、英語で話しをするだけでいっぱいいっぱいの当時の私にはそれは望めない。

少女はフライト中の緊張を少しでも紛らわせようと、アジアンのあんちゃんに声をかけてみて、思わぬ『加亜羅』なんて土産を手に入れたのだ。

そんな出来事をロンドンからグラスゴーへの機内で思い出していた。

というお話。

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前日本王者を相手にダウン挽回の大逆転ノックアウト。
試合中も、レンズを向けた時も、常に落ち着いていた安藤選手。

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