放熱の破片 vol.3
昨日(28日)に東日本新人王準決勝に足を運びました。
僕が所属していたジムの先輩で、元東洋太平洋バンタム級チャンピオンの新田渉世さんが主宰する新田ボクシングジムからライトフライ級の黒田雅之くんが駒を進めていたからです。
新田ジムでは、プロライセンスを所得した選手の写真を8×10の大きさに引き延ばしてジムに飾っています。
その撮影を担当させて頂いています。
その撮影の時に黒田くんとは面識があるのですが、物静かな青年という印象でした。
別件の仕事の打ち合わせが少々長引き、黒田くんの試合の3ラウンド目に到着しました。
新人王戦は、準決勝までが4回戦(判定までいっても4ラウンド)、決勝が6回戦(判定までいっても6ラウンド)で争われます。
黒田くんは、ここまで5戦4勝4KO1敗という軽量級にしては破格のKO率を誇るボクサーですが、この日は判定までもつれ、そして手を挙げられました。
次の決勝戦に勝てば、西日本新人王と全日本新人王をかけて戦います。
全日本新人王に輝けば、日本ランキング10位にランキングされるのです。
新人ボクサーにすれば、チャンピオンへの近道なんですね。
試合数が多いため、ゴミゴミと賑わう控室は新人王戦ならではの雰囲気です。
その空気は、普段の興行にはないもので、十数年前に僕が新人王戦に出場していた頃を思い出しました。
デビュー戦を1ラウンドKOで飾り、自分の能力を過信し、すっかりボクシングをなめてしまった僕は、2戦目でKOを狙い過ぎ判定で敗れました。
3戦目が新人王戦の1回戦でした。
本来フェザー級(57.1kg)だったのですが、2戦目で敗れた事で自分をもっと追いつめなければいけないと思い、ボクシング界にはびこる減量神話を信じてジュニアフェザー級(55.3kg)でエントリーしたのです。
4勝3KO1敗の戦績で準決勝まで進出しました。
トーナメント表の隣の山には、後に日本フェザー級チャンピオンになる木村鋭景くんが進んでいました。木村くんはデビュー当時から「辰吉2世」と注目を集めていた選手でしたから、彼に勝って新人王になりたいと強く意識していました。
しかし、勝ち進むに従って、勝てばまたこの減量があるのかと思うと、精神的にとてもきつく感じていました。
毎月のように試合があり、息を抜く間がないのですね。
プロボクサーとしては甘かったのですが、試合が近づくにつれ試合内容よりも減量の事ばかりが頭を占めてしまっていました。
そして、準決勝で敗退しました。
もし、決勝に進めていたとして、黒田くんが見せた溢れ出る笑みが僕に出たのだろうか・・・。
すこし苦い思い出です・・・。
新人達で賑わう控室の熱気は、たまらないものです。