放熱の破片 番外編2006年12月12日
昨夜の出来事・・・
”ノックアウトセンセーション”真鍋圭太くんの試合がありました。
相手は大阪の選手だったのですが、たくさんののファンが観客席から声援をおくっていました。
1ラウンド目、様子を見ている圭太くん。
あまり手は出しません。
そして、2ラウンドに入り、左フックのカウンター一発で試合を終わらせました。
そのパンチが当たる時、まるでグローブが顎に吸い込まれていくような錯覚すらおぼえました。
後楽園を後にしてから、恵比寿で写真仲間と小規模ながら忘年会があり、そちらに合流するつもりだったのですが、あのノックアウトの余韻を噛み締めたくって、一人で下北沢に向かいました。
今夜も歩いて向かったのですが、途中でタイミング良くバスに乗れたので、新代田駅までバスでの移動になりました。
僕を含めて4人の乗客を乗せてバスは走り出します。
街のネオン・社内の降車ブザーの赤・蛍光灯のグリーン・降車ステップの黄・いろいろな色がいり混じり、不思議な空間に感じました。
新代田駅でバスを降り、下北沢に向かって歩き出しました。
その薄暗い路地で驚きの再会がありました。
一人の男の人とすれ違う時に、『あっ』と思ったのです。
ボクシングジムの先輩、吉田さんと言う方でした。
能力的に、プロテストに合格するだけのものは持っていたのですが、吉田さんはプロにはならず、黙々とサンドバックを叩いていました。
そんな吉田さんも、プロテストを受験できる年齢制限の30歳を目前にして、何かが弾けたのか、プロテストに向けて猛烈な練習を始めたのです。
テストの日にちも決まっていました。
その矢先に、スパーリングで網膜剥離になってしまったのです。
入院している吉田さんのお見舞いに、仲間のボクサーと行きました。
片方の目で薄暗い病室の天井を見つめる日々、吉田さんは何を思ったのでしょうか。
思いを焦がした後楽園ホールのライトを浴びることなく、リングとの別れを迎えた吉田さんの心中は察するに余りあるものでした。
その後、吉田さんと連絡をとれる者は、周りにいませんでした。
薄暗い路地で再会した吉田さんは、元気そうでした。
「あんまりボクシングの頃の人達と、会いたくないんだよね・・・。」
そう漏らしましたが、必至にサンドバッグを叩く姿、鼻血を流しながら左フックを繰り出す姿、僕たちは、吉田さんがどんなボクサーだったのか、ちゃんと見てきて知っています。
胸を張って、
「俺は 昔ボクシングをやっていた」
そう言って欲しい・・・。
「折角再会できたんですから、写真撮らせて下さいよ。」
遠慮する吉田さんに、レンズの前に立ってもらい、シャッターボタンを押しました。
このサイトでの掲載の可否を聞くと、快く了解してくれました。
電話番号を交換し、再会を約束して下北沢への歩みを進めました。
吉田さんとの再会を誰かに話したくて、ジムの後輩で 現在はイラストレーターをしている つぼい ひろき に電話しました。
つぼいは、最近下北沢の近くに引越ししたので、すぐに出てきました。
お互いフリーランスで活動している彼とは、よくお酒を呑みに行きます。
いつもならつぼいが先に酔い潰れてお開きになるケースが多いのですが、連日の撮影疲れが溜まっていたのか、僕の目蓋が先に重くなってしまい、5時くらいに解散しました。
新聞屋さんのバイクとすれ違いながら家路につく、そんな下北沢の朝は清々しいです。
イラストレーターつぼいひろき「ちぼいの絵」
http://www.chiboi.com/