フィリピン日誌 2月15日
空港から一歩足を踏み出すと、ねっとりとまとわりつくような南国の空気に包まれた。
フィリピンは初めて来る国だが、タイに似た匂いがする。
何故かしら僕の気持ちは弾んだ。
トラブルに巻き込まれる危険性の低いエアポートタクシーのドライバーに、予約していたホテルを告げた。
今回は、仕事としての渡航なので、ノートパソコンやカメラ機材があるため、一泊500円前後の安宿を探すことはせずに、あらかじめホテルを予約しておいた。
ホテルまでの道中、ドライバーは「なに人か?」「いつまでいる?」と、ひっきりなしに話しかけてくる。
明朝早くにカガヤンデオロに行くのだと言うと、朝にホテルまで迎えにきてくれると言うではないか。
流しのタクシーと比べると、金額は相当高額だが、暗い時間に空港まで流しのタクシーで行くのはリスクが高いと感じ、お願いすることにした。
いい仕事がとれたドライバーは、ますます饒舌になり、「カガヤンデオロに何をしに行く?」と聞いてきた。
「友人のボクサーが試合をするのだ。」と伝えると、マニー・パッキャオの話になり、パッキャオの人気の高さを感じた。
チェックインをすませ、お腹がすいていたので、近辺を散策しながら食事ができるところを探した。
見知らぬ土地に来ると、できるだけ歩くことにしている。
タクシーでは車窓に流れゆく風景も、歩くことで感じることがたくさんあるからだ。
マニラのパサイという地域は、バンコクに似た匂いがたちこめる。
排気ガスの匂い・小便の匂い・どぶの匂い・屋台で売られるフルーツのにおい、様々なにおいが混ざり、何故だか懐かしいようなときめきを感じてしまう。
大きな通りの中央分離帯では、子供たちが木にロープでくくりつけたタイヤをぶら下げて、ブランコのような遊びに熱中している。
ふらりとショッピングモールに入り、最上階の食堂街でシュウマイとご飯を食べた。
しばらく街をふらつく。
日も暮れると、街灯の少ない街ではコンビニエンスストアの灯りがひと際輝いて見える。
薄暗い街には、娼婦とおぼしき女たちが立っていて声をかけてくる。
いかがわしさを感じない街に、何の魅力も感じない。
人のにおいも、マニラには溢れかえっていそうだ。
残念だが、明朝5時10分のフライトでカガヤンデオロに行く。
もっとマニラを歩いて、街のにおいに身を投じていたい、そう思った。
いよいよ、明日は土山直純くんの試合だ。