« 日経ビジネス  2008年6月16日号 | main | 映画 『憐 〜Ren〜』 »

放熱の破片  vol.22

080612-01.jpg
 
 
世界戦でのKOは、後味良く、心地よい余韻を残します。
 

080612-02.jpg
 
 
080612-03.jpg
 

2008年6月12日WBC世界バンタム級(53.5kg)タイトルマッチが日本武道館でありました。
チャンピオン 長谷川穂積(真正)が同級9位クリスチャン・ファッシオ(ウルグアイ)を迎えての6度目の防衛戦。
 
ファッシオの実力がどれくらいのものかはわかりませんが、2Rにダウンを奪うと、バランスを崩しながらでもチャンスとみるや徹底的に攻め、勝利をものにする長谷川穂積さんのボクシングは、実に気持ちが良い。
 
これからの活躍がとても楽しみです。
 
 
  
080612-04.jpg
 
 
         080612-05.jpg
 
 
WBA世界スーパーフェザー級(58.9kg)タイトルマッチは、同級7位嶋田雄大(ヨネクラ)さんが、日本人最年長世界タイトル奪取をかけて、チャンピオンのエドウィン・バレロ(ベネズエラ-帝拳ジムとプロモート契約)に挑み、7RTKOで敗れました。 
  

嶋田さんは、日本国内のライト級トップ選手に勝ち続け、日本人ライト級では最強である事を証明してきました。
その後もコンスタントに試合を続け、白星を重ねるのですが、なかなか世界戦のチャンスは巡ってきませんでした。
それが、チャンピオン バレロさんの対戦相手の負傷によって、チャンスがまわってきたのです。
 
帝拳ジムの本田会長に、「世界に挑戦したい」と幾度となく手紙を書き、それが受け入れられた結果となったんです。
 
嶋田さんの執念とともに、本田会長の懐の深さには敬服します。
 
 
 
080612-06.jpg
  
 
バレロさんはこの試合までに23戦全勝全KO勝という本物の怪物、そんなバレロさんに、試合巧者の嶋田さんなら何かをおこしてくれるのではないか。もし、何かをおこした時には、応援してくれる人達に対しての思いが強い嶋田さんなら、自分のコーナーである青コーナーのロープに上がって、武道館に咆哮をこだまさせるはずだ。それなら、青コーナー側の2階席からそのシーンを撮りたい、そんな勝手な読みで、撮影ポジションを決め、その時が来るまで、試合を撮り続けました。

 
 
そして、この夜、僕が記録したのは、レフェリーに抱きかかえられ、静かに最後を迎えた嶋田さんの姿でした。
 
 
 
080612-07.jpg
 

リングを下り、大声援に包まれながら花道を去る嶋田さんの姿を見て、この人はこれまで、そして、今日の戦いで、沢山の人の心を掴んできた人なのだと感じ、自分も心を掴まれた一人である事に気がつきました。 
 
 
080612-08.jpg
 

東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルマッチは、チャンピオン “ノックアウトダイナマイト“内山高志(ワタナベ)さんが、阪東ヒーロー(ファミリーフォーラム)くんと対戦。


試合前の控室に行くと、いつもとは違う緊張感を発する内山さんがいました。
 
やはり、世界タイトルマッチがある武道館の空気は異様なものです。
 
 
         080612-09.jpg
 
 
080612-10.jpg
 
 
080612-11.jpg
 

試合開始のゴングが鳴ると、固さの見えるチャンピオンに、ヒーローくんは積極的に攻撃を仕掛けます。
 
ヒーローくんは、34戦目にしてこの日、タイトル初挑戦に至ったイキのいいボクサー。
 
しかし、しっかりとパンチを当てる技術は内山さんが一枚上手で、途中一度だけヒーローくんの右フックがカウンターで決まり、内山さんが腰を落としかけますが、ダメージが回復してからは、強烈なボディーと強烈な右を幾度となくヒットさせ、勝利は揺るぎのないものになります。
 
KOシーンがあっておかしくない展開でしたが、ヒーローくんのガッツは底知れぬもので、12R終了のゴングを聞きました。
 
 
阪東ヒーローくんは、これに挫けず、その不屈の闘志で這い上がってきて、タイトルマッチのリングに帰ってくるでしょう。
 
 
アマチュアでは豊富なキャリアを持つ内山さんも、プロで8ラウンド以上戦った試合は5戦です。阪東ヒーローくんのようなガッツある相手も含め、色々な選手と戦い、キャリアを重ねることで、近い未来に内山高志さんが世界のベルトを巻く姿が見れると期待しています。

 
         080612-12.jpg
 
 
080612-13.jpg
 
 
前座の4回戦には、湘南RYUJU BOXING FAMILYジムプロデビュー第一号の山口隼人選手のセコンドにつく、鳥海 純さんの姿がありました。
 
 
この日のメインイベントに出場する長谷川穂積さんと鳥海さんは、互いが世界ランカーだった4年前に世界挑戦者決定戦を戦い、勝利した長谷川さんはウィラポンに挑戦し、その時つかみ取ったWBCタイトルを守り続けているんです。

 
内山高志さんは、花咲徳栄高校から拓殖大学、ワタナベジムと、鳥海さんと不思議な縁を持つ後輩。
 
そんな長谷川さんと内山さんと同じリングに、開設一年目にして、プロ第一号を送り出し、自らはセコンドとしてリングに立つ事になった鳥海さん。

 
時間は流れ、着実に新しいボクシング道を歩み始めています。
 
 
         080612-14.jpg
 
 
 
 
真正ボクシングジム
http://www.shinsei-gym.com/index.html
 

内山高志オフィシャルウェブサイト
http://uchiyama001.net/ 

 
TEAM-10-COUNT 鳥海純のブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/toriumiluna

Trackback

Archive

Profile

山口裕朗(やまぐちひろあき)
1999年プロボクサーとして17戦10勝(6KO)7敗の戦績を残し引退後、2002年 「サンデー毎日」で写真家としてデビュー。
2005年 ボクシング引退後、撮り続けている、かつての対戦 相手達の写真を、写真展『放熱の破片(かけら)』で発表。
>>プロフィール詳細

Copyright

© Hiroaki Yamaguchi All Rights Reserved