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放熱の破片  vol.24

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絶妙なタイミングで切り倒すパンチは、いつ見てもしびれます。
 

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生田真敬(ワタナベ)くんが5RTKOで勝利した試合は、久し振りに気持ちのよいノックアウトでした。

 
生田くんは、120キロあったボクシング好きな肥満児でしたが、自らプロボクサーを志してからはしっかりと減量し、今ではライト級のA級ボクサーです。
 
以前、実話ナックルズで取材させて頂いたのですが、肥満児時代に自分の肉で窒息死する怖さに痩せることを決意したと言う壮絶な経験の持ち主です。

 
 
この夜の生田くんのボクシングは、軽快なフットワークで巧みに自分の距離にしていき、サウスポーの相手にショートの右ストレートを絶妙なタイミングで当て、2度のダウンを奪っての快勝。

実に後味の良い戦いでした。


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その前座の試合でセコンドにつく、意外な人を見つけました。
 
木内信弥さんです。
 
僕は木内さんと11年前に試合をしています。
判定で勝ったのですが、ジャッジ泣かせのきわどい内容で、どちらの手が上がってもおかしくない試合でした。

僕は、木内さんに勝利し6連勝、意気揚々と日本ランカーに挑んで判定負けし、結果4連敗して引退しました。
最後に勝った相手が木内さんなんです。
 
木内さんは、僕との試合の後、日本ランカーに勝利してランクインしました。

木内さんはそれ以後も戦い続けていたのですが、2005年1月に有明コロシアムのリングに上がったのを最後に姿を見なくなりました。

しばらくして、風の噂で木内さんが東南アジアで戦い続けているらしいと聞きましたが、真相はつかめないままでした。
 
昨晩お会いしたのが3年半ぶり、その3年半、タイやシンガポールで戦い続けていたと、本人の口から聞く事が出来ました。

 
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「やっぱりボクシングは麻薬ですよね。」

 
 
そう語る木内さんの言葉ははっきりしていて、パンチドランカーのそれではなかった事に安堵の気持ちに包まれました。
 

6月から所属ジムの小平シシドボクシングジムでトレーナーに就任され、これからは選手育成に情熱を注いでいくそうです。
 
 

「今度一杯呑みに行きましょうよ。」
 
僕がお誘いすると、

 
 
「お酒はほとんど飲んだ事が無いから呑めるかあまりわからないですけど、是非。」


 
ボクシングの魔力に取り憑かれ、全てをボクシングに捧げてきた男ははにかみ笑いで答えました。
 
 
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Profile

山口裕朗(やまぐちひろあき)
1999年プロボクサーとして17戦10勝(6KO)7敗の戦績を残し引退後、2002年 「サンデー毎日」で写真家としてデビュー。
2005年 ボクシング引退後、撮り続けている、かつての対戦 相手達の写真を、写真展『放熱の破片(かけら)』で発表。
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