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diary12月8日

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  一人のボクサーの写真をプリントしました。
 
 

 僕がボクシングをしていた時のジムの先輩、新田渉世さんが、川崎市向ケ丘遊園でボクシングジムを主宰していらっしゃいます。 
 

新田ジム所属の竹内俊介くんが、眼疾の為に引退することになりました。
 
  
 僕が撮った彼の試合の写真を額に入れて竹内くんにプレゼントしたいのだけど、と、新田さんからご相談を受け、その写真をプリントしました。
 
 
5勝(4KO)3敗という戦績を残してリングを去ることになった彼の胸は、どんな思いで満ちているのだろうか・・・。 
 
 
 
 
僕は、竹内君とスパーリングをしたことがあります。
それは、2005年の冬でした。
 
 

 2004年夏、ちょうど30歳になった頃、リングへの未練も、30歳という年齢を区切りに、すっかり無くなっているだろう、そろそろ体を動かしたいな、と感じだしたんですね。 

ちょうどそんなタイミングに、元WBA世界スーパーフライ級チャンピオン 飯田覚士さんが『ボックスφ』というジムをオープンされ、通うようになりました。
ボックスφは、プロボクサーを育てるためのジムではなく、会員さんたちが楽しく体を動かすジムです。

 3ヶ月も通うようになると、かつての感覚を少しずつ思い出してきます。
相手を前にして、殴り合うスリルと興奮を味わいたい気持ちは、抑えることが出来ないほど膨らんでしまいました。 

あわよくば、後楽園のリングに再び立てないか、という、酔狂な思いを正当化する為に、色々な口実を考えてみたのですが、24歳で引退を決意した時の想いを覆す考えは浮かぶ訳がありません。
 
スパーリングで現役選手と手を合わせれば、乱れた日々の暮らしが染み付いてしまったこの肉体の堕落ぶりを自覚することが出来るだろうと思い、先輩である新田さんにお願いをして、竹内君とスパーリングをさせてもらえることになったのです。
 
現役ボクサー、しかもハードパンチャーの竹内くんに歯が立つ訳もなく、とにかくスタミナのない己の衰えをひしひしと感じ、向ケ丘遊園からの帰宅の途中、ロングピースを買って、久し振りに煙をのみました。
  
 
 

 今日プリントした写真は、きっと、彼がこの先も大切にしてくれるだろう、そう思ってプリントしました。。
彼への感謝、そしてお疲れさまという気持ち、そんな念のような想いが自分でプリントすることによって写り込むのではないか、そんなふうに思います。
  
  
 


   竹内くん、おつかれさま・・・。
 
 
 
 
 
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Profile

山口裕朗(やまぐちひろあき)
1999年プロボクサーとして17戦10勝(6KO)7敗の戦績を残し引退後、2002年 「サンデー毎日」で写真家としてデビュー。
2005年 ボクシング引退後、撮り続けている、かつての対戦 相手達の写真を、写真展『放熱の破片(かけら)』で発表。
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