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diary6月5日

 
   ボクシングが巡り会わせてくれた素敵な仲間達、神戸編   
 

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 2週間ほど前に関西に行ってきました。
撮影での出張だったのですが、依頼主はボクサー時代のジムメート アオキ ヒロシという元A級ボクサーです。
 

この男との出会いはもう10年も昔になります。
 


当時、ジムメートとはプライベートでの交遊をほとんど持っていませんでした。
試合前になると、特にピリピリした空気を発し、周りに誰も近寄らせまいとしていたんです。
後輩達は気を遣って誰も話しかけてきませんでした。

 
実に嫌な奴ですね〜。
今でも後輩達と呑みにいくと、その当時の事をからかわれます。
 
そんな中で、アオキヒロシだけは、ピリピリ空気の僕に馴れ馴れしく話しかけてくるんですね。

図々しい奴ですね〜。
 
階級も同じだったので、ある日スパーリングをする事になったんですね。
スピードはあるけど、怖さを感じなかったので、少しプレッシャーを強めてみました。 
 
スパーリングは、課題をテストするものと捉えていて、試合とは別物と考えていたので、模擬試合のような感じでガチガチの殴り合いはしなかったんですけど、この時は
 

『図々しい奴は嫌いだもんね、倒してやっかんな。』 
 
 
と、むきになって倒してみました。
 
そのスパーリングからは不思議と距離が縮まり、家が近所だった事もあり、試合前も試合後も一緒に過ごす時間が増えていきました。
 

僕の引退後も、彼は細く長く戦い続け、気がつけば8回戦のリングにあがるようになっていました。 
秀でた身体能力のおかげで、そこそこの試合準備でも勝ってきたヒロシの最大の弱点は精神的な線の細さだったと思います。
しかし、A級に上がってくるボクサーは、C級B級と勝ち抜いて来ていて、精神的に弱い奴は少なくなる訳で、試合に備えて自分を追い込めないボクサーは、苦しい時に自分を支える気持ちの柱が無くなってしまうと思うんですね。
 

そんなヒロシが、昨年10月にしっかりと体を作り上げてラストファイトを戦ったんです。
リングに上がると、筋肉に乏しかった細い体にはしっかりと筋肉がつき、脂肪もちゃんと削ぎ落とされていました。


『ヒロシは本気だな。』

 
アスリートは体で多くを語れるものだと思っています。
この時のヒロシの体は、厳しいトレーニングを耐えて来たことを感じさせるに十分な体でした。 


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相手は、アマチュア2冠からプロに転向した選手でした。 
スピードやロングレンジでの戦いでは歯が立たないだろうと、本来のスタイルを捨て、試合開始から接近戦に持ち込もうとしたのですが、やはりそう簡単に入れてくれません。
そして、ほんの瞬きの間に相手のパンチはヒロシの急所を捕らえ、1RでKOされてしまいました。
結果は負けですが、初めてボクサーとしてアオキヒロシの姿を見れただけで、僕はよかったんです。
勿論プロですから勝つ事がすべてですが、アオキヒロシは弱い自分に克ったんじゃないか、そんな風に感じます。

 
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社交的なヒロシは、ジムの後輩達をまとめて海にバーベキューに行ったりするのが好きで、そこに僕も呼んでくれていたおかげで、僕と時代が重なる事のなかった後輩達と、今も繋がる事が出来ています。  

ラストファイトからしばらくして、実家の手伝いをすると神戸に帰って行きました。 
そのお店の撮影を依頼してくれたんです。
お店が終わってから呑みに行き、美味しい串揚げもご馳走になり、実に楽しい滞在でした。
 

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神戸をあとにした僕は、電車に揺られて京都に向かいました。
あの男と会う為に・・・



              ボクシングが巡り会わせてくれた素敵な仲間達、滋賀編へつづく

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Profile

山口裕朗(やまぐちひろあき)
1999年プロボクサーとして17戦10勝(6KO)7敗の戦績を残し引退後、2002年 「サンデー毎日」で写真家としてデビュー。
2005年 ボクシング引退後、撮り続けている、かつての対戦 相手達の写真を、写真展『放熱の破片(かけら)』で発表。
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