放熱の破片 vol.29
まだ榎くんの目には力が残っている。
24日後楽園ホールで開催されたWBA世界フェザー級(57.1kg)タイトルマッチ、王者クリス・ジョン(インドネシア)に榎洋之(角海老宝石)が挑戦しました。
以前から、榎くんの目から放たれる野性的な力に、引きつけられていました。
純粋でありながら獣のように鋭い目。
挑戦者は、序盤から積極的に攻め、チャンピオンにダメージを与える事が出来るパンチを当てるシーンもありましたが、安定王者はさすがに追撃を許してくれません。
離れればストーレート系のパンチ、接近すればアッパーカットを効果的にきめて、しっかりとポイントを奪っていきます。
試合終了のゴングが鳴るまで好ファイトは続きました。
ジャブの当て方がピカイチの榎くんは、ジャブからの後続打がうまくだせずに、ここ最近の戦い方に迷いを感じているのではと見ていて思いましたが、この夜の戦い方には、そんな迷いのようなものはみつけることができませんでした。
迷路から抜け出すヒントを掴んだのではないだろうか、と勝手に考えてしまいます。
もっと強くて、そして負けないボクシング、この敗戦を糧に、再出発する榎くんの姿が見たい。
控え室で、記者の方々に囲まれ、試合を振り返るその顔は、左目を大きく腫らし疲れきっていましたが、その目の奥底に眠る力はまだまだ強い。