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放熱の破片  vol.35

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2008年12月9日後楽園ホールで開催された OVER HEAT BOXER'S NIGHT Vol.47 のメインイベント8回戦、日本スーパーライト級(63.5kg)4位 長瀬慎弥(フラッシュ赤羽)くんと会田篤(ワタナベ)くんが対決しました。
 

 
2人のファイトスタイルを考えれば、好試合になる事は想像出来たので、楽しみにしていたのですが、予想を裏切らぬ好試合になりました。 
 
 
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初回、長瀬くんの右がカウンターでヒットして会田くんがダウンします。
会田くんは立ち上がり、2ラウンド以降は一進一退のスリリングな打撃戦が繰り広げられ、身体が“ビクッ”と反応してしまうようなタイミングの相打ちが何度も見られました。
 
そんな中で、元々スーパーフェザー級(58.9kg)を主戦場としていた会田くんが体力の差で若干押されているのかな、と感じさせるようになります。
 
7ラウンドに長瀬くんの右がカウンターで決まり、会田くんが2度目のダウン。
ダメージが深く見えますが、追撃する長瀬くんを逆にロープに詰め返して反撃し、会田くんがガッツをみせます。
 
最終8ラウンドも互角の打ち合いは続き、試合は判定に持ち込まれました。

 
 
2度のダウンはありましたが、印象的には会田くんが取っていたラウンドも少なくないと感じていたので、勝敗は以外と微妙かなと思いました。
 
ジャッジの採点は、2-0で長瀬くんの判定勝ち。

 
スリリングなパンチの交換に、熱くなりました。
 
 
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試合後、控室に行くと、昨晩WBC女子ライトフライ級暫定王座防衛を果たしたチャンピオン 富樫直美さんがいました。
 

昨晩、富樫さんと挑戦者の菊地さんは、1ラウンドから激しい打ち合いを見せ、ホールを湧かせました。
 

目の前に居る富樫さんは、そんな激闘を見せたボクサーのオーラを微塵も感じさせず、一人の穏やかな女性にしか見えません。
 
 

昨晩は、カメラを持たずに客席から観戦をしました。
客席からボクシングを見ると、観客の様子やセコンドの様子、普段写真を撮っていると気がつかない、一歩ひいた目線でボクシングを見る事が出来ます。
その距離で会場を見ていると、この人がどれほど周囲の人に慕われているのか、その人柄が良く伝わります。


「昨夜は凄い試合でしたね。 防衛おめでとうございます。」
 
と思いを伝えると、申し訳なさそうにしながら、控えめに
 
「ありがとうございました。」
と言い、口にマスク、左目に眼帯をした顔から唯一見える表情、右目の目元に柔らかなはにかみ笑いが浮かびました。
 
 
フォトジェニックな、素敵な表情がマスクの下にはあるのだろうな・・・。
 
 

不躾なお願いだと十分わかりながら、撮影させて頂いてもいいですか、と聞くと、マスクを外してくれました。
 
「これもとったほうがいいですよね。」
 
と言って、眼帯を外そうとしてくれたのですが、それは僕を一瞬迷わせました。

女性である富樫さんの傷ついた顔を撮らせてもらって、俺はどうしようというんだ・・・。




眼帯をしたままの富樫さんにレンズを向けさせてもらいました。





写真を撮るという行為は、時としてひどく暴力的だなと感じる事があります。

勿論、相手が嫌だという時は撮らないようにしていますが、承諾してくれて撮影しても、それは、時に自分の心を鋭くえぐる。


それでも、僕は写真を撮る覚悟を決めた。

そうして写し出した写真が、人の心に何かを伝える力を持った写真になると信じ、僕は写真を撮ります。



長瀬くん、会田くん、富樫さん、「ボクシングな夜」にしてくれて今日はありがとうございます。
 
 
 
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プロボクサー 長瀬慎弥 web

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Profile

山口裕朗(やまぐちひろあき)
1999年プロボクサーとして17戦10勝(6KO)7敗の戦績を残し引退後、2002年 「サンデー毎日」で写真家としてデビュー。
2005年 ボクシング引退後、撮り続けている、かつての対戦 相手達の写真を、写真展『放熱の破片(かけら)』で発表。
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