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放熱の破片  vol.31

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パンチが空を切る音を聞いた。

 

OPBF(東洋太平洋)スパーフェザー級(58.9kg)タイトルマッチ、チャンピオン “ノックアウトダイナマイト” 内山高志(ワタナベ)が文柄主(韓国)を迎えての3度目の防衛戦が昨夜、後楽園ホールでありました。
 
 
試合前、内山君の控室に挨拶に行くと、ダイナマイトは僕の姿を見つけると、いつものように爽やかな笑顔で、「こんにちは」と声をかけてくれました。

そして、シャドーボクシングをはじめます。

彼が鋭いパンチをくり出す度に
 
 

“ビュッ”
 
 

っと、パンチが空を切る音が聞こえるんです。
 
ボクサーは、パンチを打つ時に“シュッ”と言いますが、内山くんのそれは、口から発せられた音ではないんです。

16の頃からボクシングを見てきていますが、パンチが空を切る音を出すボクサーと出会ったのは、おそらく初めてです。

 
今日もこのパンチで観客を魅了するのだろうとワクワクします。


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豊富なアマチュアキャリアで培われた技術力で試合を支配し、強いパンチで相手を仕留め、これまで10戦10勝(7KO)のチャンピオンが、ダウン経験がなく、9勝(7KO)5敗と、KOパンチを持っているチャレンジャーどう戦うのかに注目しました。


1ラウンドは、内山さんもジャブをついて様子を見ながら時折強烈な左右ボディーを叩き込む展開ではじまりました。
 
2ラウンドからは、ぐいぐい前に出てくる挑戦者と頭をつけて、真っ向から打ち合いにいき、ボディーを狙います。
 
3ラウンドもタフな挑戦者のボディーを叩き、ガードの間からアッパーを叩き込みますが、挑戦者が顔色を全く変えないのを見ると、この選手はきいていないのかも、と自分のパンチに疑いを持つかもしれません。 

しかし、相手はだって人間です、これだけ強烈なパンチを打たれてダメージを負わないわけはないんです。

 
4ラウンド、左ボディーで挑戦者がロープに下がると、一気にたたみ掛け、相手は崩れ落ちました。

 
4ラウンドTKOで3度目の防衛に成功しました。
 


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控室で、記者の皆さんに囲まれての取材を受けます。

隣には渡辺会長と、トレーナーの洪東植(ホン・ドンシク)さんが座っています。
 
洪さんは、内山くんの右手に氷嚢をのせながら、温かい眼差しで彼を見守っている、その姿が洪さんと選手の絆を感じさせます。
 
 
 
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以前、洪さんと内山くんが一緒に写っている写真を内山くんに渡した時に、


「山口さん、この写真洪さんに渡してもいいですか? 二人で写っている写真を洪さんあんまり持っていないと思うんで。」

「ちゃんと洪さんの分も用意してあるから大丈夫だよ。」


洪さんと内山くんの絆の深さ、この人が側に居てくれれば安心する、そんな人と巡り会えた内山くんが羨ましく感じました。

 
3度目の防衛おめでとう!!
 
 
 



内山高志オフィシャルウェブサイト 

 

Talk is cheap 新田渉世『戦士と語る』洪東植トレーナー
 
 

放熱の破片バックナンバー

放熱の破片  vol.1
 
放熱の破片  vol.17
 
放熱の破片  vol.22

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Profile

山口裕朗(やまぐちひろあき)
1999年プロボクサーとして17戦10勝(6KO)7敗の戦績を残し引退後、2002年 「サンデー毎日」で写真家としてデビュー。
2005年 ボクシング引退後、撮り続けている、かつての対戦 相手達の写真を、写真展『放熱の破片(かけら)』で発表。
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