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放熱の破片  vol.48

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ダイナマイト爆発!
 
内山高志よ、感動した!!
 

 2010年1月11日の朝は,目が覚めてから、不思議な緊張と興奮が僕を包んでいました。
昔、自分が試合をする時の朝を思い出してしまうような緊張と高ぶり方です。


それほど、WBA世界スーパーフェザー級(58.9kg)タイトルマッチ、チャンピオン ファン・カルロス・サルガド(メキシコ)に“ノックアウトダイナマイト”内山高志が挑むこの試合は魅力的なカードであり、内山高志という魅力的なボクサーが世界の頂点に立つ姿を見たいという期待感に溢れた日でした。

 
 

控室での内山くんは、いつもの試合と同じ様子で、堂々としていました。
メインイベンターの彼がピリピリすれば、周りも気を遣いますが、和やかなムードの中でシューズを履き、ウォームアップをしていきます。
 
 
 
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夏頃にジムを去っていたトレーナーの洪東植(ホン ドンシク)さんがこの場にいない事が、僕の中で一つだけ気がかりだったのですが、(放熱の破片vol.31)10月の東洋太平洋タイトル防衛戦の時は、ワタナベジムの会長・トレーナー達が一丸となり、チーム内山として戦いに臨んでいたんです。


チーム内山は、ジムでの練習の時も、この日の控室でも、素晴らしいチームワークで、内山くんをバックアップしていました。
その姿を見ていて、僕の気がかりは杞憂だと気づきました。

 

広くフラットな東京ビッグサイトは、少々寒かったのですが、挑戦者の入場曲ロッキー ザ ファイナルのサウンドトラックTREE 6 MAFIAのIt's A Fightが流れると、会場は一気に熱気に溢れ、内山くんへの声援で満たされます。

これまで、この男がどれほど周りの人間を大切にしてきたのかをつくづく感じます。
スポットライトに照らされ、入場する彼の姿はまさに戦場に赴く戦士であり、興奮と平静とをバランス良く保った表情は輝いていました。
 


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 試合開始のゴングが鳴ると、ジャブを突きながらしっかりとディフェンスし、相手の打ち終わりにリターンの左フックを合わす、いつもの動きを見せます。

左で自分の距離を作る事が出来れば、強烈なボディーブローを織り交ぜた攻撃で、内山くんのペースになっていきます。

チャンピオンはダメージを積み重ね、ちゃんと採点をしていた訳ではありませんが、ポイントは挑戦者が奪っているように感じました。


挑戦者優勢の中、迎えた最終ラウンドも内山くんは挑戦者らしく、ベルトを奪い取るべく手を出し攻撃の手を緩めません。
試合終了までの残り時間が40秒くらいになったところで、チャンピオンがロープに後退し、内山くんが連打すると左フックが命中し、ここまで耐えてきたチャンピオンもたまらずダウン。
立ち上がってきた相手を、ためらい無く一気に殴りつけレフェリーが割って入りました。
残り時間12秒でのTKO勝利。
 

興奮してカメラを放し、「うちやま〜っ!」と叫んでしまいそうでした。
 
 

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リング上でのインタビューで、まっさきにお世話になった人達に感謝の言葉を述べる彼の律儀さがとても気持ちが良い。
 

試合前から、不必要な挑発もせず、相手に対しての敬意を忘れない、本当に素敵な男です。
勝ちに徹して物足りない試合をすることなく、チャレンジャーとして果敢に攻め続ける実に気持ちのよい試合は、見る人に大きな感動の余韻を刻みます。
リングの上で勇敢に戦う事こそプロボクサーとしての本質であると、内山高志を見ていて感じました。

 
 
ワタナベジムは、これまで平野公夫さん・吉野弘幸さん・柳光和博さん・河野公平くん・冨山浩之介くんと、5人が世界の壁に跳ね返されてきましたが、ジム初の(男子)世界チャンピオン誕生。
渡辺会長も長い間念願だった世界チャンピオンを誕生させたんです。
 
プロになる気のなかった内山くんを、渡辺会長や、当時ワタナベジムのマネージャーだった瀬端幸男さん(現ビータイトスポーツジム会長)が熱心に口説いていなければ、この夜の熱い戦いを見る事は出来なかったんです。

 

試合後の会見で、長谷川穂積さんや西岡利晃さんのようなスーパーチャンピオンになりたいと語った内山くん、そうなれる男だと強く思います。
 

ワタナベジムの皆さん、内山くん、本当におめでとう!!


 
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当サイト内で過去に内山高志くんの事を掲載しておりますので、ご覧下さい。

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Profile

山口裕朗(やまぐちひろあき)
1999年プロボクサーとして17戦10勝(6KO)7敗の戦績を残し引退後、2002年 「サンデー毎日」で写真家としてデビュー。
2005年 ボクシング引退後、撮り続けている、かつての対戦 相手達の写真を、写真展『放熱の破片(かけら)』で発表。
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