放熱の破片 vol.41
僕は凉野康太くんに謝らなければいけません。
2009年3月13日、凉野康太(五代)はリングにかえってきました。
昨年、凉野くんが三浦数馬くんに敗れた試合でみせた、やけに清々しいリングの下り方をみて、凉野くんをもうこの戦いの場で見る事はないだろうと、勝手に思っていました。
何か、彼にやり遂げた充実感の臭いを感じたんです。
三浦くんに敗れて4連敗、この日まで、約3年4ヶ月白星から遠ざかっており、凉野くんが再びこの戦いの荒野へと戻ってくるとは思いもよらない事でした。
それは、僕自身がランク入りをかけた戦いで4連敗を喫して引退した体験が、すくなからず関係していたかもしれません。
涼野くんは、27戦14勝3KO10敗3分け と負けも少なくないのですが、最近の4連敗の対戦相手を見ると、塩谷悠(川島ジム)、阿部元一(ヨネクラジム)渡邉一久(角海老宝石)、三浦数馬(ドリームジム)と、とても質の高い選手ばかりでした。
相手が強かったからといって、凉野くんが強いということにはなりませんが、いつも善戦する彼は、地力があって、ランキングに名前を連ねていてもおかしくない選手だと思います。
対する笛木亮(ジャパンスポーツジム)選手は、15戦13勝10KO1敗1分のハードヒッター。
一昨年のB級トーナメントを制して現在7連勝中。
試合開始のゴングが鳴ると、凉野くんは積極的に前に出てパンチを振るいます。
なかなかタイミングよく右のフックやボディーが当たり、相手の出ばなをくじきました。
そして、初回中盤に、ドンピシャのタイミングでパンチを合わせて笛木が痛烈にダウンします。
立ち上がったものの、レフェリーは再会を許しませんでした。
五代会長と抱き合い、咆哮を上げる凉野くん。
諦めてはいけない。自分の可能性を信じて戦いの場から去らなかったからこそ掴んだ勝利でした。
そんな彼に、もう辞めてしまうのではないかと勝手に書いてしまった僕は、凉野康太に謝らなければいけませんね。
勝手な事を言ってごめんね。
次も写真を撮らせて下さい。
メインイベントは、日本スーパーライト級3位長瀬慎弥(フラッシュ赤羽)くんが、2007年の全日本新人王、迫田太治(横田スポーツ)と対戦。
この試合は、長瀬君がどう勝つか、その勝ち方が大切だと思っていましたが、試合前の控室に顔を出すと、右膝をテーピングでがっちりと固定した長瀬君がいてびっくりしました
「ちょっと怪我しちゃいました。」と苦笑いを浮かべる長瀬君。
試合前にマイナスな事を考えても言われても仕方がありませんし、
「輪島さんみたいに、相手を混乱させようとしているんでしょ。」
と思い当たった言葉を冗談めかして言って、その場を去りました。
戦いのゴングが鳴ると、やはり踏ん張りがきかない様子で、軽快な動きも影を潜めていました。
パワーで押し込まれながらもクリーンヒットを奪います。
そして、判定になり引き分け。
試合後聞くと、前十字靭帯断裂という重傷を抱えていたそうで、その身体でよくもあそこまで戦ったものだと驚きました。
怪我が治って、軽快な動きの長瀬君が戻ってくる日を待ってます。
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